2025年04月01日
生成AIとの壁打ち、その効能を高めるには
ビジネスでの壁打ちとは
「壁打ち」とはテニス用語で、一人で壁に向かってボールを打ち、跳ね返ってきたボールをまた壁に向かって打ち返す練習方法です。壁打ち用コートで自分の打球を確認しつつスイングを繰り返すことで、正しいフォームを身につけることができます。壁に打つボールのスピードや角度、回転のかかり方は一球ごとに異なり、壁からは様々な球が返ってきます。このため、壁に向かってボールを打ち、跳ね返ってきたボールをまた壁に向かって打つことを続けるのは中々難しく、これを打ち損じることなく繰り返すことで自分のフォームを正していきます。
図表1:3つの壁打ち(左から右に出現順)出典:生成AIにて作画
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ビジネスにおける人との壁打ちは、漠然としたアイデアの整理や改善、具体化するために使われます。相手に話しかけることでフィードバックや反応を受け取り、自分の考えを整理していくという点で、確かにテニスの壁打ちと似ています。未だ漠然としたアイデアであっても他人に話すことで自分の考えが明確になり、次のステップが見えてきます。課題や問題を他人に話している内に、解決策が見つかることはよくあります。他人の意見を聞くことで、自分では気づかなかった視点や方策を思いつくことができます。
ビジネス用語としての壁打ちという表現が使われ出したのはこの数年で、当初は新規事業立ち上げに関わる起業家や経営者が事業アイデアや戦略を練る際に、他人の意見を求めるために使われ始めたようです。その後、ビジネスの壁打ちはアイデアを練るコミュニケーション手法として利用者が広がってきています。
生成AIとの壁打ちが可能に
最近は、これまでの有識者等の人に代わり、生成AIを壁打ち相手として利用できるようになってきました。人が相手の壁打ちでは、まず、適任者を探し、その人にスケジュール調整してもらう段取りが必要となります。しかし、生成AIが相手だと24時間365日いつでも壁打ちでき、その時間が長くなっても気にする必要はありません。次に、人に壁打ちを頼むとなると、やはり気兼ねし、話したい内容についてそれなりの準備が必要となります。これが、生成AIが相手となると全く気を遣うことなく、準備なしでいきなり意見交換に入ることもできます。そして、人と壁打ちをする内容は、その人が有する知識や経験の範囲に限られますが、生成AIだとテーマに関係なく、広く受け答えしてくれます。このように生成AIの出現によって壁打ちのハードルは一気に下がり、必要な時に誰でも気軽に利用できるようになりました。生成AIとの壁打ちの留意点
上記3つの壁打ちとの関係性や共通点から、今後活用機会が増えていく生成AIとの壁打ちを効果的に行う上での留意点がいくつか見えてきます。まず、どの壁打ちにおいても、相手から帰ってくる答えの善し悪しは自分の質問次第で決まります。従って、ビジネスでの壁打ち効果を高めるには、自身の思考力、即ち仮説力や質問力の向上が不可欠となります。これはテニスの壁打ちでも言えることで、壁からの返球の善し悪しは、打ち手の力量次第です。次に、壁打ちからのアウトプットの扱いについては全て自己責任となります。特に生成AIからの返答には、まことしやかな間違いが1~2割含まれているようで、壁打ちの返答を鵜呑みすることなく、必ず自身で検証する必要があります。そして3番目の留意点は、人相手と生成AI相手の2つの壁打ちを巧く使い分けることです。人との壁打ちでは、お互いのバックグランドや関心を共有できるため、レベルの高いフィードバックが得られます。生成AI相手の壁打ちでは、プロンプトを巧く使うにしてもお互いの認識合わせは簡単ではありません。また、人相手の壁打ちでは、微妙なニュアンスや感情、価値観を理解したフィードバックが得られますが、これは、生成AIでは無理です。この使い分けはテニスにおいても当てはまり、フォームや基本的なストロークを磨きたい場合は壁打ちが効果的ですが、実戦感覚や戦術の確認をしたい場合は、こちらの弱いところを見極め、返球を意図的に変えてくれる人相手のラリーが適しています。製造業で生成AI相手の壁打ちを使いこなそう
製造業における生成AIの活用については、以前の当コラムでも論じたように※1色々考えられますが、その中でも生成AI相手の壁打ちは部門や立場に関係なく誰もが身近に利用できます。例えば、新製品のアイデア出しやプロセス改善の立案、問題への対策など上流から下流まで幅広く利用できる利便性の高いツールとなります。
図表2:製造業における生成AIとの壁打ちテーマ例
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※1:製造業における生成AI活用のすすめ~生成AIと非生成AIの組みわせ~
https://kobelcosys-dev.demo.iqnet.co.jp/column/monozukuri/20240901/
2025年4月
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